前回の記事の予告で、次回は六武衆デッキについて書くと言ったがどうしても筆を取る気になれず、気持ちの整理をつけるために本記事を書くことにした。
私は大会に参加するようなガチガチの決闘者ではないし、Vジャンプのイラストをスクラップするような熱心なコレクターでもなかった。遊戯王は大好きだったけれど、他にもたくさんのアニメや漫画にハマってきた、その中の一つであった。
そんな私でも、振り返ると人生の思い出の節々に遊戯王がある。
遊戯王との出会い
「デュエル」ときけば、まず思い浮かぶのは遊戯王のカードゲーム。たとえ他のゲームでも、自分の手番がきたら「俺のターン!」。山札やくじを引く時は「ドロー!」、ダイスを振る時は「ダイスロール!」。遊戯王を見たことがなくても、アラサー世代には染み付いているのではないだろうか。
遊戯王の連載開始は1996年42号。当時はまだ週刊少年ジャンプを読む年齢ではなかった私は、いつ遊戯王の原作を読み始めたか記憶にない。気がついた時には弟が単行本を集めており、それを借りたりこっそり部屋に入ったりして読んでいた。後者は許されることではないが、弟も私の部屋の漫画を勝手に持って行ったりしていたのでおあいこだろう。
おそらく一番最初に遊戯王に触れたのは、ゲームボーイソフトの方ではないだろうか。カラーではなく白黒でも遊んだ記憶があるので、おそらく初代。カードを集めるのに周回が必要で、かなりの時間プレイしたと思う。
カードゲームもいつから集めていたのか正確には覚えていないが、小学生のうちから持っていた。バンダイ版のカードダスの筐体が玩具屋にあり、クリスマスや誕生日のプレゼントを買ってもらうついでに、ねだって回させてもらったものだ。
原作の思い出
初めて少年ジャンプを買ったのは、NARUTOがまだサスケ奪還編をやっていた頃だ。楽しみだった漫画はNARUTOのほか、アイシールド21、Mr.FULL SWING、SHARMAN KING、そして遊☆戯☆王。連載終了した時はかなりショックで寂しかったのを覚えている。
遊戯王は週間連載とは思えないほどトーンが貼られ、絵柄こそ変わったけれど初期からずっと画力が高く、モンスターのデザインも秀逸で大好きだった。コマ割りも大胆なのに見やすい。そしてインパクトの強い「ドン★」という描き文字の効果音。
よく真似して絵を描いていたが、何度描いても闇遊戯の髪型が難しかった。あの髪型を思いつくのもすごいし、それでいてカッコ良いキャラクターに仕上がるのが本当にセンスを感じる。遊戯王シリーズの主人公は皆髪型が変わっていると言われるけれど、ぶっちぎりで武藤遊戯が一番ぶっとんでいる。しかも、あれで地味で目立たないという設定。普通思いつかない。
大学生となり初めてのアルバイトの給料で、私は文庫版の遊戯王を大人買いした。遠方で一人暮らしを始め、もう弟の部屋で遊戯王を読むことができなくなった。それに、ジャンプコミックスの単行本とは違った厚塗りの表紙がどれも素晴らしく、揃えたくなったのだ。
文庫版はところどころ修正されており、主に初期の闇遊戯(通称:魔王)の顔がマイルドになっている。もともとの絵も好きだった私は、のちに単行本の方も揃えた。そちらは引っ越しの際、本棚を減らす必要が生じて泣く泣く売ったが、残しておけばよかったと今では思う。
好きなデュエル
一番は、やはりラストデュエルである「闘いの儀」。エースモンスターであるブラック・マジシャンだけでなく、三体の神をも従えた闇遊戯と、これまでずっと隣で彼のデュエルを見てきた表遊戯の対決。
1巻の頃の遊戯とは、作画だけでなく内面も変わっている。闇遊戯、もといアテムは、友情を得て優しくなった。いじめられっ子だった遊戯は、デュエルだけでなく心も強くなった。
封印の黄金櫃に入れられたのが死者蘇生だと解った時、読んだ当時は衝撃を受けた。作中でも言われている通り、遊戯にとっても強力なカードだったからだ。そして、込められたメッセージ。デュエル構成が神がかっている。
最後に泣いている遊戯へ、アテムが声をかけるシーン。アニメ版では風間さんの演技が素晴らしく、何度見ても泣ける。むしろ、今書きながら思い出して目頭が熱くなっている。
お前は弱くなんかない…
高橋和希,「遊☆戯☆王22 (集英社文庫(コミック版))」, 集英社, 2008
ずっと誰にも負けない強さを持っていたじゃないか…
「優しさ」って強さを…
オレはお前から教わったんだぜ
相棒…
他にはバトルシティでの海馬VSイシズが好きだ。手札を開示することになり、2ページに渡って「おのれぇぇ!」とぐぬぬしている海馬の面白さもさることながら、神を生贄に青眼を召喚する展開が熱すぎる。他にも城之内VSリシド、洗脳城之内VS遊戯、遊戯VSパンドラが面白かった。パンドラ戦は、怒涛の魔法の応酬からの、同時に蘇生され見開きで対峙するブラック・マジシャンがめちゃくちゃ格好良い。ブラマジガールが初めて登場するデュエルでもある。
王国編では城之内VSキース、遊戯VS舞。舞がハーピィが傷つくのを見たくないからとサレンダーするのが印象に残っている。この後の舞と城之内のハンカチのくだりも良いのである。
好きなキャラクター
主人公・武藤遊戯はもちろんとして、一番好きなキャラクターは実は本田ヒロト。というのも、カードゲームバトル漫画にシフトする前の、闇のゲーム編が好きだったからだ。一人で蛭谷軍団を3人まで相手にできる腕っ節と、「履けりゃゲタでも構わん!」という漢らしさ、悪友として遊戯とは違った城之内とのやりとり。ネタとしては、一角獣の本田、本田くんのリーゼントがブロックの隙間に、お掃除委員、おみそ。昔から、漢らしい脇役が好きである。
一番好きな決闘者は城之内くん。主人公の遊戯や、遊戯と当たるまでは勝つと解る海馬と違って、一番どうなるか分からないのでワクワクした。実力だけではなく、「天使のサイコロ」や「ルーレット・スパイダー」等のギャンブル要素があるのも面白い。マリク戦での「クイズ」の使い方は大変上手い。
彼の使うモンスターも好きだった。ギルフォオード・ザ・ライトイング、カッコ良い。三体生贄召喚はロマン。一番好きなモンスターはワイバーンの戦士なのだが、攻撃力1500のバニラでは現実で使えないのが悲しい。だが好きなので、リンクスでは「墓守の従者」と「ユニオン・アタック」を使ったミッション用の効果ダメデッキに入れている。
カードゲームの思い出
バンダイ版の、4枚集めることで1枚の絵になる青眼の白竜三体連結は、当時の小学生の憧れだった。残念ながら、私は集め切ることができなかった。
友人の家に遊びに行った際、彼女が揃えていて羨ましかったのを覚えている。私は前述の通り男兄弟がいたので、遊戯王に限らずゾイドやベイブレード、ビーダマン、ミニ四駆、ハイパー・ヨーヨーなど、男児の間で盛り上がったものは一通り嗜んできた。だが姉妹しかおらず、後にギャルとなった彼女すらも遊戯王カードを集めていたあたり、当時の流行ぶりが伺える。
とはいえ残念ながら、女児のコミュニティでは放課後に公園で集まってデュエル、とはならなかった。私の対戦相手は弟のみ。ちゃんとしたテーマデッキを組んだことはなく、パックを剥いて出たあり合わせのカードを適当に突っ込んでいた。OCGとバンダイ版を混ぜためちゃくちゃなデッキでデュエルしたこともある。
実家ではOCGのパックがいくつかストックしてあって、テストの成績のご褒美として配布されていた。中高生くらいまでのことである。その頃には弟とデュエルすることも減っていたはずだが、それでも嬉しく、パックを剥くのは毎回楽しみだった。OCGの、あの独特の匂いが好きだった。今でもかぐと懐かしい気持ちになる。
当時のお気に入りのカードは罠カードの「援軍」と「鎖付きブーメラン」。援軍はカード名が銀色でキラキラして綺麗だった。意気揚々と攻撃してきた相手を、こちらの打点を上げて返り討ちにする、という効果も好きだ。今も昔も性格が悪い。
ゲームソフトの思い出
対戦相手がいない私にとって、遊戯王のカードゲームといえば紙よりゲームソフトの方が思い出深い。特にDM4の最強決闘者戦記は、これまで対戦相手だった城之内を主人公にデッキを使えるのが嬉しく、かなりの時間遊んだ。なんと今だに手元にある。久しぶりにやってみたいが、GBゲーム用に持っていたアドバンスは電池を入れっぱなしにしていた為、液漏れで使えない。
コストの制度は面倒だったが、今思えばバランス調整に結構良いシステムだったのかもしれない。融合カードを使わず、カードを重ねて融合していた記憶があるが、思わぬ組み合わせで融合モンスターが生まれて楽しかった。ヤマタノ竜絵巻にはよくお世話になった。
DMシリーズはその後、ゲームボーイアドバンス版の6〜8をプレイしている。6では海馬の積み込みがひどく、ほぼ毎回「デビル・フランケン」からの「青眼の究極龍」、「巨大化」のコンボを決めてくる。孔雀舞も海馬ほどではないが積み込んでいた。それでも楽しかったので、積み込みのない他のキャラクターをしばいて遊んでいた。
アドバンスソフトは他に「双六のスゴロク」も持っている。どんな内容だったかは覚えていないが、この辺りのソフトは全て現存しているので、またそのうち遊んでみたい。
他によく覚えているのは、プレイステーション版の「封印されし記憶」。ずっとゲームボーイの小さなドットだったのが、テレビ画面に綺麗なCGでプレイできるようになったのは嬉しかった。
このゲームではモンスターの属性や種族の他に、「水星」とか「金星」といった惑星モチーフのステータスがあって、召喚する時に選べた気がする。属性のように相関図があり、不利だと攻撃力が500くらい下がった。ややこしいので、当時はよくわからないまま遊んでいたものの、楽しかった。
ストーリーも原作の古代編のプロトタイプのようで結構面白かったと思う。原作では出てこない、古代版の城之内・ジョーノやアンズも登場する。
ちなみにプレステ版二作目の「継承されし記憶」では、古代エジプトではなく西洋が舞台で、カードゲームではなくDDM風。何故。
そしてDM4とプレイ時間で1、2を争うのはDS版の「NIGHTMARE TROUBADOUR」。大学生の頃、これとポケットモンスター・ソウルシルバーをずっとやっていた。
これまでのゲームでは城之内が作中で使ったカードや、戦士族・獣戦士族系でデッキを組んでいたが、このゲームではバーン系のデッキをメインで使っていた。どんなデッキだったか確認しようと思って探したら、パッケージしか見つからなかった。中身は一体どこへ…。
遊戯王と今
学生時代にDS版ソフトを遊んで以降、しばらくデュエルや遊戯王から離れていた。私がデュエルに復帰したのは、リンクスがリリースされてからになる。
事前登録をしたのに忘れていて、しばらく経ってからプレイを始めた。真六武衆に出会う前はXセイバーのストラクで遊んでいたが、無課金で全然勝てずにCPU戦ばかりやっていた。
道場とエニシが規制された頃からモチベーションが下がってしまい、再び離れたものの、戻ってきたのはマスターデュエルのリリースがきっかけである。シンクロまでしか解らないので、エクシーズとペンデュラムを予習する為に再開した。いきなりマスターデュエルに手を出すには、リンク召喚があるとルールが一気に変わって覚えるのが大変そうだったからだ。
肝心のMDは未だにインストールしていない。六武衆のストーリーが追加されたらしいので、そろそろやりたいと思っている。しかしクロスデュエルの事前登録も始まり、そちらも面白そうなのでいつになったら手を出せるのだろうか。
エクシーズとペンデュラムを学ぶという当初の目的を達成したにもかかわらず、今やデュエルリンクスは私の生活の一部だ。
読書感想のアウトプット用として立ち上げたこのブログも、書きたい記事のストックはリンクスネタばかりで、遊戯王がメインと化しつつある。確かに遊戯王は長く親しんできたが、決してガチ勢とはいえない遊戯王歴でこんなことになるとは、思ってもみなかった。
遊戯王がくれたもの
この漫画も連載始めて二年以上たちました。
高橋和希,「遊☆戯☆王 13巻」,集英社 ,1999
カードとかゲームソフトとかいろいろ出たけど、いつも机に座ってるオレは、みんなが遊んでいるところは見れないわけです。
みんなが楽しんでるところがみたいなあー。
もし「遊戯王」という共通の目的で、君に一人でも多くの友達ができたなら、オレはこの漫画を描いて本当良かったなと思います。
それが一番、うれしいです。
当サイトに連動して開設したTwitterを通じて、私はついに他の決闘者と交流できるようになった。これまでは別のアカウントで遊戯王の話をしていたが、相互フォロワー達のホームグラウンドは別の漫画やゲームだ。それでも、付き合いの長いフォロワーの中には遊戯王がきっかけの人もいる。もう10年近くになるだろうか。ありがたいことだ。
こうして振り返ると、遊戯王が繋いでくれた縁は私にもたくさんある。
今、毎日更新を楽しみにしている某ゲーム実況集団もその一つ。リンクスの攻略動画を探していたのが視聴のきっかけだった。リンクスの動画はもう更新されていないが、今だに生放送や動画内でたくさん遊戯王のネタや話題が出てきて楽しい。
これからもきっと、私の人生には遊戯王がどこかにあるんだろう。熱しやすく冷めやすい私が、こんなに何度も繰り返しハマった漫画は遊戯王だけだ。
今年7月7日、突然の訃報は、正直まだ受け入れられていない。翌日にも悲しいニュースがあったこともあって、もしかしたら夢なんじゃないかとすら思う。
ただ、リンクスにログインする度、追悼の文字が目に入る。今後、新しいイラストを見ることはできない。新作映画に、監修ストーリーや原画はない。遊戯王30周年の舞台に、原作者の姿はない。それだけは事実だ。本当に悲しい。
まだまだたくさんのイラストを見たかったし、30周年も40周年も一緒にお祝いしたかった。
心からご冥福をお祈りするには、もう少し時間が必要だ。まだお別れの言葉を言えるほど、現実を認められていない。
それでも、遊戯王作品とデュエルは今後も楽しみたいし、今後も遊戯王を通じて新しい友人ができたら嬉しい。遊戯王に出会い、遊戯王を好きになり、今も好きでい続けられて良かったと思う。遊戯王というコンテンツが、これからもずっと続いて欲しい。
だから今は、ただ感謝の気持ちだけお伝えしたいと思う。
高橋和希先生。
たくさんの青春の思い出と、人生の楽しみ、出会いを頂き、
本当にありがとうございました。
2022.07.27 西マサキ
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